運動を健康づくりの道具に《水泳と心臓》
ハッピーな伝言板2022年1月号
12月19日に前澤友作という一般人が宇宙から帰還し話題になりました。宇宙滞在中は、船内でいろいろな運動を披露していましたが、帰還し船内から出ると自力では歩けませんでした。この現象は特に珍しい光景ではなく、宇宙から帰ってきた人のいつもの光景です。たった10日余りの滞在なのに重力のないところから、重力のある地球に戻るとそうなります。我々は日常空気の存在に気が付かないように重力の存在を身近に感じることはありませんが、カラダのあらゆる箇所が重力の影響を受けています。
1.水泳は心臓に悪い?
一般的に「水泳は全身運動でカラダに良い」と思われていますが、必ずしもそうではありません。私の考えでは、陸上で生きる我々人類にとっては、かえって「水泳は心臓に悪い?」といえます。その理由は2つあって、まず水泳選手のカラダはいわゆる逆三角形で外見的には「良いカラダ」をしていますが、水の中でかなり重力を受けにくい環境で運動を行っているので陸上にあがるとある意味宇宙から帰ってきた人のように重力の影響をかなり受けているはずです。
近代のスポーツ界では「科学的なトレーニング」と称した練習方法が盛んです。その一つに「高地トレーニング」があります。通常の環境で行う運動を酸素の薄い高地で行うことによって正常な酸素下で今まで以上の能力が発揮できるようになるという理論の裏付けが元になっています。
確かに記録だけをみると成果はあるかもしれませんが、カラダに与えるあらゆる負担を考えると個人的にはこの方法には疑問を持っています。特に水泳の選手が、より心臓に負担のかかる高地で陸上トレーニングを行うことは即刻やめるべきだと考えています。水泳選手は、宇宙飛行士とまではいかなくともかなりの「無重力状態での運動」だからです。高地におけるトレーニングと記録向上についてはかなりの研究が進んでいるようですが、心臓や各器官、脳などへの影響についても早急に検証が必要といえます。
2012年のロンドンオリンピックで北島康介選手の最大のライバルといわれたノルウェーのアレクサンドル・ダーレオーエン選手は大会前に心臓麻痺で突然死しました。まだまだ記憶に新しい事故ですが、私は、彼の死因は「高地トレーニング」が原因と考えています。もちろん、世界中の水泳選手の急死を調べればかなりの選手が他界していることと思います。科学的なトレーニングと銘打ち記録追求ばかり行うべきではありません。もうそんな時代ではありません。
2.水泳前の陸上での準備運動は、心臓麻痺を誘発しやすい
水泳と心臓つながりですでに何度も述べておりますが、水泳前の陸上での準備運動は行ってはいけません。陸上で体温を上げ全身の血液循環を良くすると、その後、冷たい水に入ることで全身の血管が一気に収縮、心臓麻痺を起こす原因となるからです。
このように記録優先や過去の習慣のみで運動を行うことは今では「大きな事故の元」となっています。2022年、「自分の健康づくりに役立つ運動」とは何をどのようにすべきかを再確認し、取り組んでいただきたいものです。
まっく体操クラブ 代表 向井忠義
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