《「仕返しして来なさい」は絶対ダメ》

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《「仕返しして来なさい」は絶対ダメ》
ハッピーな伝言板 2022年6月号

ほぼ毎年、大晦日になるとどこかのTV局で「忠臣蔵」が放映されます。時代劇ファンの私は良く観ますが、昔のものを観ると結構何回も涙するシーンが出てきます。こんなに何年間も上映されるのは、いうまでもなく割腹をさせられた殿様の恨みを晴らした敵討ちという「美談」が大きな要因と考えられますが、見方を変えれば意地悪をした吉良上野介に対する赤穂浪士による「仕返し劇」でもあります。映画はほとんど仇討ちをして戻ってくるシーンで終わりますが、その後の赤穂浪士がどうなったかはみなさんの知るところです。

この時代では、許されたことだったかも知れませんし、1944年生まれの私の時代にも、明治生まれの父と「九州生まれの男の子」ということで「男は強くなければ」とか、外から泣いて帰ると「家に入れてくれない」。さらにいじめられたら「仕返ししてこい」という教育を受けました。しかし、今となってはこうした考え方は、何の対策にもプラスにもなりません。むしろ自分に返ってくる弊害の方が大きい世相になっています。
4月から、子ども達は、入園、入学、クラス替えなど新しい生活や今までと違う環境の中に置かれています。集団という環境や新しい人間関係が始まるわけですが、未経験のことが多いうえにまだ対応法が身についていないので、どうしても適切な行動がとれません。その上、嫌がらせやいじめをする子どももいます。かといって嫌なことやいじめをされたときにただ「我慢すれば良いのか」となるとそれも理不尽さを感じます。では、どうすればより望ましいのか、解決策ということではなく考え方について私なりの提案をしてみたいと思います。

1.「仕返し」はかえって悲惨な結果を生みやすい

わが子がいじめられてうれしい親はいません。しかし、見方を変えるといじめられるということは「気になる存在」だったり、「弱そうな雰囲気である」ことも一因です。そこで対策としては、弱そうに見えないたくましくハキハキした性格に育てることが大切ですが、そんな性格やカラダづくりは一朝一夕にはできません。とはいえ、自分より強い相手をやっつけることもかないません。そこで勝つには、①後ろから奇襲攻撃をかけるか、②物をもって対抗する、③仲間を募って大勢で相手をやっつけるなどどうしても「卑怯な手」になりがちです。特に、もし刃物を持って仕返しをすると理由はどうであれ大変な結果を招くことになります。いじめられた上に「犯罪者」になってしまうからです。これでは、踏んだり蹴ったりというか、割に合いません。

2.こんな悲惨な事例が

何年も前のことですが、ある女子中学生が学校の廊下で前方から来たいじめっ子グループのリーダーをポケットに隠し持っていたナイフですれ違いざまに刺すという事件がありました。いじめられている最中であれば、多少違った対応になったかもしれませんが、「歩いているとき突然刺す」という行為では一方的に悪い評価を受け、退学処分どころではない「殺人未遂罪」という重い処罰と生涯消えない汚点が残ります。この子が、「仕返し教育」を受けていたかどうかは分かりませんが、「仕返しをする」という考え方は、「やられた分だけやり返す」という程度ではなく必ず大きな仕返しになります。おそらく、相手の息の根を止めないと「仕返しが恐ろしい」からという恐怖心がそうさせるのではないかと思います。

この他にも悲惨な結果をまねいたケースがありますが、このルーティーンにはまると「いじめ返されないように」とどんどんいじめ度が増し、エスカレートする可能性が大きくなります。仕返しをすれば一時的には「スッキリする」ように思えますが、それ以上に大きな副作用が跳ね返ってきます。いじめられた側の「このままでは自分の気持ちが収まらない」と思う気持ちは分かりますが、「我慢強い精神を育てるいいチャンス」と考え、親子でいじめられた辛い体験を乗り越え「心身共に強い子どもづくり」に生かす道を見つける方が賢明ではないでしょうか。

3.いじめられへの対応は

しかしながら、「いじめられてただ我慢すれば良いのか」、との反論があるのは当然です。では、学校や教育委員会は、どう対応すべきかがありますが、そちらは、ある意味「専門家集団」なのでそちらの対応法についてはここでは触れません。家庭でどう対応するかについてのみ述べます。いじめ問題で心掛けたいことは、早期発見です。それには、①子どもとの日常会話が大切です。子どもにいって聞かせるだけでなく、子どもの話をよく聞く習慣を持つこと。②年齢や性別にもよりますが一緒に入浴するなどしてカラダの様子を見る。③もし、「いじめられている」と感じたら、大騒ぎせず会話の中からそれを感じとり、どんな子と遊んでいるかなどを知る。④いじめをしている子が分かったら、その子やそのお母さんと保護者が仲良くする。(攻撃しない)⑤「いじめている方が悪い」とか、「いじめられている方がかわいそう」などとジャッジをせずに「仲良くする良さ」を体験させる。⑥もし、子どもの方から「いじめを受けている」と話があった場合は、「良く話してくれたね」と話してくれたことを褒め、相手に対する対応を親がやってしまわないことです。どうしたら解決策として良いのかを一緒に考えるようにしたいものです。そうすることで、これからも起こる可能性のある違ういじめへの対処法も身につきます。「人にいやな思いをさせない子どもづくり」に生かした方が、折角の体験が生きてくると思います。

我が子がいじめられているからと感情的になったり、同情したりすることは人として、親として当然のことであり、理解できますが、「子育ては知識」です。どうすれば、いじめられない子(人間)になるかの方法を身に付ける方が、今後の子どもの人生に役立ちます。
いずれにしても「いじめ問題」は根の深い、困った問題です。親も子も辛い体験ですが、親子で一緒に乗り越えることで、より信頼関係を深め、絆を育てる材料に変えられたら素晴らしいのではないでしょうか。

 

「いじめ問題」は、子どもだけでなく、大人社会にも蔓延しています。この提案は、いうまでもなく「絶対的な解決法」ではありません。このことがひとつのヒントになり、親子で、家族で解決法を考え対応することで、強くしっかりした心身づくりに役立てる方が、結果的には「勝者」につながるのではないでしょうか。
私は、常々いじめられる子より、いじめる子どもの方が「かわいそうな子ども」と考えています。次号は、「いじめをしない子の育て方」について述べる予定です。

まっく体操クラブ代表 向井忠義

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